初歩のお点前や茶道体験で抹茶をいただくお茶は、「薄茶(うすちゃ)」といわれています。
甘味処や和菓子やさんの喫茶室(カフェ)、お寺・神社や日本庭園などで出されるお抹茶は、ほぼ間違いなく薄茶です。
これに対して、お茶事や初釜、少人数のお茶会などの際には、「濃茶(こいちゃ)」が出されることがあります。濃茶とは、薄茶に対して文字どおり、濃いお茶です。抹茶の濃度は薄茶の2倍程は濃く、上質な抹茶がとろりと練り上げられています。
また、濃茶は一碗に点てられたお茶を数人で回し飲みすることが一般的です。
一碗に数名分をいっしょに点てて、数名で回しのむことは利休さんが始めたとも言われています。
室町時代末期のわび茶の湯が始まったころは、天目茶碗にひとり一碗ずつお茶をいただいていましたそうです。
2014年のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」で官兵衛役の岡田准一くんなどが、茶室で天目台に天目茶碗でお茶をいただいている姿を覚えている方も多いかもしれません。
日本人も99.9%がいただいたことはないはず?!ここでは、表千家流での濃茶のいただき方について、説明します。
同じ流派でも先生によって細かいところが異なる場合もありますので、あくまでも参考程度にしてください。
その1:茶室で客の位置に座る
お茶室を拝見(掛け軸→お釜→棚・水差し)した後、客の位置に座ります。
畳の縁(へり)から、お茶碗を置いたりお道具を拝見したりできる程のスペースをあけて座ってくださいね。
お茶碗やお道具を扱うスペースを確保します。
正客(一番目のメインのお客様)が、畳のへりからそれくらいの間をあけて座っているはずなので、横からみてきれいに一列になるように座るといいですね。
その2:お菓子をいただく
より正式なお茶席では、お菓子器は縁高(ふちたか:重箱になっている)を使われることも多いです。また、表千家流では、主菓子(おもがし)は食籠(じきろう)という蓋付の菓子器で出されることも多いです。ここでは入門編として菓子鉢(かしばち)にお菓子が盛られてきた場合の説明をします。
①菓子鉢が正客の前に出される
お運びさん:正客の前、へり外に菓子鉢をおいて一礼
→正客も受けて一礼
②正客:菓子鉢をへり外・次客との間に置き、「お先に」
→菓子鉢をへり外・正面に戻す
→亭主にたいして一礼「お菓子をちょうだいします」
→懐紙を取り出して膝前に置く
→右手で箸をとる
→左手を菓子鉢に添えながら
→箸で菓子をはさんで、懐紙の上におく
→箸の先を懐紙で拭う
→箸を菓子鉢に戻す
→菓子鉢を両手でへり外・次客との間におく
→懐紙ごと菓子をもって、菓子をいただく
③次客:菓子鉢はそのままで、次の客へ一礼「お先に」
→正客と同様の手順でいただく
その3:いよいよ濃茶が出されたら
流儀によってもかなり異なりますので、ご参考まで。
①正客の前へ、お茶碗&だし帛紗が出されます。
亭主が出したお茶碗&だし帛紗を正客が自分でとりに行く場合もあります。
②正客:茶碗・だし帛紗を次客との間において、みなさんに一礼
→次客以下:正客の一礼をうけて総礼
③正客:茶碗を膝前に置く
→だし帛紗を手のひらの上に開いて茶碗をのせる
→軽くおしいただく
→茶碗を小さく2回回して
→お茶を一口いただく
④亭主より「いかがですか?」とお服加減をたずねられる
→正客:「けっこうでございます」「まろやかでとても美味しいです」など返答
⑤正客:お茶を二口ほどいただく
(いただく分量の目安は、お茶を回し飲む人数で等分になるように)
⑥正客:お茶をいただいた後、茶碗を膝前におく
→だし帛紗を茶碗の横におく
→飲み口を懐紙で拭う
→茶碗を小さく2回・向こうに回し、茶碗の正面を戻す
⑦次客:さらに次の客へ「お先に」と礼をする
⑧正客:茶碗を右手であつかって(一度、左手のひらにのせて)
→へり内・次客との間に置く
→次客に送り礼 (次客も礼を受ける)
⑨次客:右手で茶碗をとり、正客と同様にお茶をいただく
⑩正客:亭主にお茶名・お詰めをたずねる
例えば
正客:「お茶名(おちゃめい)は?」
亭主:「祥雲の昔でございます」
正客:「お詰め(おつめ※茶師・お茶のメーカーのこと)は?」
亭主:「柳桜園(りゅうおうえん)」でございます」
ここで、先にいただいたお菓子についてもおたずねする
Point
・濃茶がなるべく熱いうちに末客までまわるように、手早く送ること!
※客が男性同士の場合、または流派によっては手渡しする場合もあります